東大寺お水取りの一番長い日「3月12日」は、水と火の競演に圧倒される

東大寺二月堂修二会(お水取り)は、2月20日の前行に始まり、本行は3月1日~3月14日まで行われます。

修二会は、二月堂の本尊「十一面観音菩薩」に対して、罪悔(つみとが)を懺悔し天下泰平などを祈る「十一面観音悔過」を行う行法です。

修二会では、「十一面観音悔過(けか)」が毎日6回繰り返され、これを6時の行法といいます。昼3時の晨朝(じんじょう)・日中・日没(もつ)、夜3時の初夜・半夜・後夜、の6つの時間帯に分けます。

有名な「お松明」は、「初夜」の上堂の時に練行衆の足元を照らす明かりなので、1日から14日まで毎日行われます。12日と14日以外は19時の大鐘を合図に10本(12日のみ11本)のお松明があがります。

一か月近く行われる行法の中でも、3月12日はお水取りが実際に行われる日であり、お松明も「籠松明(かごたいまつ)」という特別な松明が使われます。そして、修二会の主な行事を体験できる特別な日でもあります。

そこで、3月12日の行法を時間を追ってみてみたいと思います。

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参籠衆(さんろうしゅう)と配役

修二会の参加する人々を参籠といい、参籠する僧侶のことを「練行衆(れんぎょうしゅう)」 と呼びます。そして、食作法などの奉任や重要な行法に奉任し「練行衆」を補佐する役割が「三役」です。

有名な大松明を担ぎ上げ、礼堂を走るのは三役である童子です。修二会では、ただの裏方ではなく主役にもなる重要な役目です。

練行衆は序列や役割によって「職:しょく(四職:ししき)」と「平:ひら(平衆:ひらしゅう)」に分かれると共に、堂内の座席位置により、「北座衆」と「南座衆」に分かれます。

四職
和上(わじょう)     練行衆に戒(かい)を授ける役
大導師(だいどうし)   祈願を司る行法全体の導師
咒師(しゅし)      密教的、神道的なものをも含めた修法を司る
堂司(どうつかさ)    平衆を率い修二会の進行を司る

平衆
総(北)衆之一(衆之一) 北座(きたざ)衆の長であるとともに平衆の長
南座衆之一(南衆)    南座(なんざ)衆の長
北座衆之二(北二)    北座の次席
南座衆之二(南二)    南座の次席
中灯之一(中灯)     会中の記録役、かつては二人いた時代もある
権処世界(権処)     処世界を補佐
処世界(処世界)     堂内の掃除、準備等

現在では11名です。

三役
堂童子(どうどうじ)
礼堂(らいどう)・外陣・閼伽井屋などの管理、行に関わる作法を行う。
お水取りでは、咒師と共に閼伽井屋に入って香水を汲む。
童子
初夜上堂時に松明持ちを勤め、平衆の上堂・下堂時につき従う。松明の作成など。
小綱兼木守
法会の会計・雑法務担当。小観音儀式での松明を抱え御厨子の先導役。燈明管理など。
大炊    炊飯役
院士    調菜役
加供(かく)堂司からの連絡係
駈士    湯屋の掌握、雑法務など。
仲間    練行衆の世話役

12時頃 食堂作法

加供の「お茶はいかが」という触れにより、練行衆は身支度を整えます。出司の鐘が鳴ると出司し着座します。

堂童子と童子が二月堂本尊、十一面観音菩薩に仏飯を供えます。
食堂では、大導師が主となり祈りを捧げ、一汁一菜の精進料理を食べます。

無言の食事作法も行の一つで、その後深夜の行が終わるまで飲食を絶ちます。

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(▲食堂作法 出典:小学館「東大寺お水取り」)

練行衆は、鳥獣への施食のため、紙に包んだ生飯(さば)を閼伽井屋の屋根に向かって投げます。

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(▲生飯を投げる練行衆 出典:平凡社カラ―新書 「お水取り」)

13時頃 上堂

加供が「用意よろしいでしょうか」と問いかけ、処世界童子が「ご案内」「ご案内」と先に立ち平衆が一団で上堂し、内陣の掃除をします。

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(▲上堂 出典:小学館「東大寺お水取り」)

少し後に、四職は仲間(ちゅうげん)を伴って上堂し待機します。

内陣清掃が終わると、処世界が四職内陣出仕の鐘をつき、内陣に出仕します。

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13時10分頃 「日中」勤行

一日の長い勤行の始まりです。

13時35分頃 数取懺悔

初めに、平衆の一人一人が自分の過ちを懺悔する詞を述べます。
和上・大導師・咒師は、自席で千礼、衆之一から南二までは仏前で二千礼、中灯から処世界までは礼堂で三千礼します。
修行の浅い者ほど、罪悪を犯しがちであるので礼拝の数が多くなります。

数え方は「一遍、二編、三遍、五編・・・」と「四」を抜きます。その代わり「五」以降で一回、数字をダブり帳尻を合わせます。

位が大きくなると十遍、二十遍、三十遍、五十編・・・と飛ばして「百遍」の次は「二百遍・・・」で、「千遍」。
これを3回繰り返すと「三千遍」となります。

最後に大導師が、凡夫ゆえに心を乱す弱さと、それゆえに懺悔して励む至情を本尊に披歴します。

数取懺悔は、5日、7日、12日、14日の4回行われます。

達陀帽頂き、平衆に司から達陀帽を渡され長押にかけておきます。

13時45分頃 下堂・入浴・仮眠

小綱が「お湯屋へござろう、お湯屋へござろう」とふれると練行衆は順次入浴できます。
入浴後2時間足らず仮眠をとります。

16時頃 お目覚

加供が「おめさ、おめさ」とふれ回ると、練行衆は起床し洗面して、上堂の支度をします。

16時30分頃 上堂

上堂時の内陣掃除を行い、内陣に出仕します。

17時頃 「日没」勤行

「日没」勤行を勤めます。

17時30分頃 例時作法

咒師が主役を勤め仏説阿弥陀経の読誦を軸とした法要を行い、内陣に戻り観音経を読誦します。

17時40分 内陣掃除

燈明・華籠・時香盤・諷誦箱など初夜の準備が行われます。「木取り」や「達陀」の諸準備も四職も手伝い行われます。

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(▲掃除 出典:小学館「東大寺お水取り」)

18時10分頃 達陀習礼

「達陀」の八天の動きや所作・手順を確認しながら下稽古をします。
和上・大導師・咒師は準備後下堂するが、司・平衆は内陣で「八天加持」の所作をひととおり練習・打ち合わせします。

18時20分頃 下堂・休憩

処世界は処世界部屋に退出し、他は下堂し休憩します。

18時40分頃 処世界内陣清掃

処世界は僅かな休息後、内陣に戻り「初夜」の準備を行います。

処世界は通常、内陣で準備が終了すると上堂をうながす鐘を突く仕事があるので、初夜の上堂作法には加わらないが、12日だけは上堂した権処に鐘突きを引き継いで駆け降ります。

19時30分頃 練行衆細殿出仕・三度の案内

練行衆は細殿に出仕し、加供が加供松明に点火します。司が「時香の案内」と叫ぶと、加供は松明を両手で高く掲げて登廊を駆け上がり二月堂の出仕口で「時香の案内」と叫んで駆け下る。

同様に「用事の案内」と「出仕の案内」についても、細殿と二月堂の間を往復し三度の案内を行います。
湯屋の前では、大篝火が点火され炎が上がります。

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19時40分 籠松明・練行衆上堂

お松明は、「初夜」の練行衆が上堂する時に足下を照らすためのものです。
普段は10本ですが、12日だけはひときわ大きい籠松明となり、清掃で残っていた処世界も下堂するため、籠松明は11本となります。

籠松明はいつもより20キロ以上重い、60キロから70キロにもなります。3月8日朝に堂子は、自分が持つ籠松明を組み立てます。
12日は、練行衆を先導する童子も介添えが加わり二人で行います。

そして、普段より大きな籠松明に先導された練行衆が二月堂に上堂します。籠松明は登廊の天井を焦がさんばかりに大きく燃え上がります。

回廊に上がると北西角で一度止まり、欄干を枕にして伽藍から突き出しぐるぐる回転させる。火の粉が舞い落ち炎が立ち上り参拝客から「おぉー」と歓声が上がります。火の粉を浴びると一年間無病息災で暮らせると言われています。

そして、籠松明を担ぎ回廊を北から南に向かって駆け抜けると籠松明が明るく輝きます。
西南の角でも伽藍から突き出し、ぐるぐる振り回し1本の松明が終わります。

これを11本繰り返すと1時間近い時間が費やされます。

下座の人から順に一人ずつ上堂するため、平衆は司の上堂まで礼堂にいて一斉に内陣に入り本尊を拝し行道します。

20時30分頃 「初夜」勤行

初夜は後夜は、大時と呼ばれ丁寧に行われます。勧請作法では、咒師の支持により吹き貝の作法が行われます。南北呼応して高音と低音の数吹きが繰り返されます。

21時10分頃 「初夜」の大導師作法

平衆により「神名帳」が独特な節で奉読されます。次第に節が省略されテンポが速くなっていきます。

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(▲神名帳 出典:小学館「東大寺お水取り」)

内手水(ないちょうず)と呼ばれる15分程度の休憩後に「過去帳」が読み上げられます。
過去帳は東大寺建立の聖武天皇から現代に至る、東大寺にゆかりの深い名が記載されています。

低くゆったりとした声で唄う初段の後、抑揚が大きくなる二段、聞き取れないほどの速さで早駆けする3段、鎌倉時代の比丘尼までは全員読み上げられるが、その後は拾い読みされます。

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(▲二月堂修中過去帳 室町~江戸時代原本 出典:奈良国立博物館 H10年特別陳列)

写真下段真ん中に記入されている「青衣(しょうえ)の女人」も読み上げられます。

大導師は、全世界の人の幸せの為に心を込めて祈願します。「加供帳」に記載された修二会奉加者の名前と「諷誦文」を捧げた施主の祈りも読み上げます。

23時30分頃 初夜の咒師作法

法螺貝の音が鳴り、大導師に代わり咒師が金襴の咒師帽をかぶり堂内の守護と法会の成就を願う修法を行います。

0時15分頃 「半夜」勤行

小時と呼ばれ唱句や礼拝などが簡略されています。

0時50分頃 「走り」・香水授与

「走り」は、実忠和尚が笠置の奥山でこの世ならぬ行法を拝したことにより、人界にも写して勤めたいと願ったのが始まりです。天界1日分に相当する人界400年を早めるため、走って行道の数を満たすものです。

練行衆が香水で身・堂内を清め、本尊を讃嘆しながら行道を重ねスピードが次第に早くなり、次々に礼堂に出て五体板に膝を突いて内陣に駆け入り着座します。

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(▲走り 出典:小学館「東大寺お水取り」)

最後の2人が駆け巡った後内陣に戻ると、中灯と権処世界が香水杓を持ち回り練行衆に数滴の香水を与えます。
堂童子・小綱や堂子たちに香水が配られ、礼堂や聴聞者まで配られます。

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(▲香水杓 「走り」の後香水を分け与える独特の法具 出典:奈良国立博物館 H10年特別陳列)

香水
(▲香水を分け与える練行衆)

1時30分頃 「後夜」勤行

大時と呼ばれる勤行が行われます。司が床をふみならしながら華籠を配ったり声明(しょうみょう)のリズムに合わせ足拍子を踏んで行道したりします。

1時50分頃 「お水取り」

「後夜」勤行を中断し「水取り」が行われます。
咒師は咒師帽をかぶり、洒水器と散杖(さんじょう)を持ち水取衆の先頭に立ち南の出仕口から出堂します。平衆(北二以下5名)は牛玉杖と法螺貝を持ち水取松明に点火し咒師に従います。

南階段上で、待機していた堂童子や堂子・庄駈士(しょうのくし)を従え行列を作ります。

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(▲二月堂諸堂の配置図)

先頭が、咒師松明を抱えた堂子・咒師・平衆・御幣と楚(すわえ)を持った講社の人・駈士・閼伽桶を担いだ庄駈士・堂堂子は閼伽桶を小脇に抱えて咒師の傍に立ちます。

堂子達は、水取松明を掲げて練行衆の傍に立ち足元を照らします。法螺貝の合図により、階段を下り途中の興成社でお詣りしてから、閼伽井屋に向います。

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(▲お水取り)

先導する咒師松明は、太いハスの形をしているので「ハス松明」とも呼ばれています。

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(▲咒師松明 出典:小学館「東大寺お水取り」)

閼伽井屋に入るのは、咒師と堂童子・閼伽桶を担いだ庄駈士だけで、平衆5人が入口を警護します。
香水は2荷ずつ3往復して二月堂に汲み上げます。

汲み上げられた香水は、内陣に残った練行衆が受け取ります。

深夜に行われる「お水取り」は秘儀で、全く見えないが人垣は二月堂一体にひしめいて行列の往復を見守るのみです。

本堂と閼伽井屋との連絡は、法螺貝をふき合いって連絡します。

水取衆が二月堂に戻ると、中断していた「後夜」の勤行が再開します。

2時30分頃 「後夜」の大導師作法

「加供帳」の読み上げなどがされます。

3時頃 「後夜」の咒師作法

法螺貝の音が鳴り、大導師に代わり咒師が金襴の咒師帽をかぶり堂内の守護と法会の成就を願う修法を行います。

3時20分頃 「達陀(だったん)」

達陀は、諸行事の中で、最も華麗で躍動的な行事です。
八天の持つ呪持で法会の場を清め加持し、松明の火の強力な呪力で除災招福を願うものです。

咒師は堂童子に内陣正面の戸帳を巻き上げさせ、練行衆に達陀松明の点火を命じます。

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(▲戸帳巻き上げ 出典:小学館「東大寺お水取り」)

司と平衆が八天(火天・水天・芥子・楊枝・大刀・鈴・錫杖・法螺)となり、交互に正面に出ては、火の粉・香水・ハゼを礼堂にまき散らし、楊枝を飛ばし、鈴・錫杖を鳴らし、太刀をかざし、法螺貝を吹いて走り帰ります。

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(▲達陀 出典:小学館「東大寺お水取り」)

この間に、大導師と和上が達陀松明に点火します。
この松明を火天が抱かえて正面にあらわれ水天と向き合って、踊り上がるように礼堂に向かって飛び出し、飛び退ります。

法螺貝・鈴・錫杖の音がリズムをとります。10回ほど火天は跳躍し松明を引きずって内陣を一周し正面に戻ります。
内陣は炎に包まれ礼堂も熱気に包まれます。

松明の加持は十回余り繰り返され、火勢が衰えた頃咒師の合図で松明が内陣出仕口に立てられ、礼堂に投げ倒させた後、再び垂直に立てられて内陣に運び込まれます。

興奮さめやらぬ中、タイミング良く堂童子がを戸帳を素早く下して終了となります。

3時40分頃 「晨朝(じんじょう)」勤行

半夜と同じ、小時の縮めた勤行を行います。
6時の中で最も短い勤行です。

3時55分頃 下堂・就寝

深夜うす明かりの登廊を「手水・手水」と叫びながら駆け降ります。これは、練行衆の留守の間に二月堂に魔物が侵入しないように「手水のために少しだけ下堂する」という意味で、魔物をだますためのものです。

主な行事など

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(▲主要行事時刻表 出典:小学館「蘇りの人と水」東大寺修二会)
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(▲二月堂周辺建物)

(参考資料:ならら2004.2月号、平凡社「お水取り」、奈良国立博物館「東大寺二月堂とお水取り」)

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